◇部分月蝕
◇秋夜火星近
◇鳴門観潮
11月19日に部分月蝕がありました。部分とはいっても、最大で月の直径の97.8%が地球の陰に入って欠けるので、ほとんど皆既月食のようでした。大阪では、月の出が概ね17時で、この時はすでに欠けた状態になっており、その後だんだんと欠けた部分が大きくなり、19時頃に最大となりました。
月の出時刻の17時はまだ明るかったのですが、暗くなってくると大半が暗い赤胴色になって一部分が輝くので、普段の月の満ち欠けとは異なる様相となりました。その後だんだんと欠けた部分が小さくなり、20時前に月蝕が終わりました。月蝕は満月の時の現象なので、現れた月は明るい満月でした。
次に国内で月蝕が見られるのは、皆既月食は来年の11月8日ですが、部分月蝕は2086年11月21日までないそうです。
日暮東山経雨靑 日暮の東山 雨を経て青く
遙天孤月入陰冥 遥天の孤月 陰に入りて冥し
食殘玉片金波淡 食残の玉片は 金波淡く
有頃復圓昭我庭 頃く有りて 円に復し 我庭を昭らす
(註) 金波=月の光
令和三年十一月 光琇
意訳 日が暮れて、東の山は雨に洗われて青々としている。遥か天空の月は、地球の陰に隠れてすでに薄暗い。わずかに残る月のかけらは淡い光を発しているだけだが、しばらくするとその月片は満月に戻り、我庭を明るく照らし出した。
新秋山麓立三更 新秋の山麓 三更に立てば
渺渺碧空神気清 渺渺たる碧空 神気清し
一点火星千萬里 一点の火星 千万里
細光明滅動吟情 細光 明滅し 吟情を動かす
(註一) 三更=真夜中
(註二) 渺渺=はてしなく広がるさま
平成三十年九月 光琇
2018年7月31日に、火星と地球が大接近しました。この時の火星・地球間の距離は5759万kmです。7月31日に限らず、6月下旬から9月上旬にかけて南の空にひときわ大きく輝く赤い星を観測することができます。
火星は地球のすぐ外側を公転しています。外側を公転している惑星ほど公転周期が長く、地球の周期が365日なのに対し火星のそれは687日で、約780日ごとに接近します。火星は楕円軌道を描いて公転しているため接近距離は毎回異なり、今回は6000万kmを下回る大接近となりました。
意訳 新秋の真夜中に山麓に立って、はてしなく広がる青空を見ていると不思議な気がしてくる。火星は、大接近しているとはいえ何千万里も離れている。小さな光が明滅しているのを見ると、何となくこの情景を詩にしてみたくなる。
四国の鳴門と淡路島とは、鳴門海峡で隔てられています。海峡最狭部の幅は1.4kmで、海峡を挟む播磨灘と紀伊水道との潮位差により最大流速20km/hという激しい水流が生じます。鳴門の渦潮はこの最狭部の下流側に現れ、大きいものでは直径15mになります。
鳴門側・淡路島側から出ている観潮船に乗るか、鳴門海峡大橋内に設けられている遊歩道「渦の道」から見下ろすことにより、渦潮を間近で見ることができます。私は鳴門側から渦の道を進み、45mの高さから海面を見下ろして迫力のある渦潮を見学しました。
碧天雲散轉蒼茫 碧天は雲散じ 転蒼茫
海上銀橋冷夕陽 海上の銀橋は 夕陽に冷やかなり
殷殷雷聲渦飲水 殷殷たる雷声 渦 水を飲み
波紋忽砕海湯湯 波紋 忽ち砕け 海 湯湯たり
(註一) 殷殷=大きな音が重々しくとどろくさま
(註二) 湯湯=わきたつような勢いで流れるさま
平成三十年六月 光琇
意訳 青空は雲がなく果てしなく広がっている。海上には銀色の橋が架かり夕日を受けて冷たく輝いている。橋の下では、重々しい音を立てて渦が水を呑み込み、波紋が砕けて海の水が勢いよく流れている。